龍王さま―雨乞いの場所

 生産のすべてを自然に託すしかなかった農本時代の昔は、 風水害・旱魃・冷害・虫害・天候不良におびえる日々であった。
 福山市重文に指定されている「土屋家日記」(福山市蔵王町、土屋大作氏所蔵)を見ると、 文久4年(1864)の日照りは70日間続き、
 『8月5日、深津村汐崎社で雨祈?。三日三晩参籠』
 『8月17日、吉津村七面社に於て雨祈?…八ッ半過ぎより雨降り…丁度70日照り続き…』と記している。
 寺社に雨乞い祈?を頼む一方、村民は龍王さまを祀っている高い山頂付近の場で、 火を燃やし思いを寄せていた。
 坪生の地での龍王さまは、神森山、中山、清水山、それにここの4社が祀られているが、 ここ馬鞍山が坪生を代表する場であった。
 各戸総出で、一人ひとりが藁や柴など燃える物をかついで登り、 宇山村(現春日町)の煙を合図に、一斉に火をつけたと、80代のお年寄りは記憶されている。 昭和12年ごろが、この地で最後の雨乞いであった。
 なお、長雨で困る時は、止雨祈?も行なわれていた。

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